1月 27

RIcoh GR Digital / Onomichi / Hiroshima.
MITメディアラボの教授、石井裕さんが書いた「テレビの未来」という記事を読んでふと感じたことを。この記事は、要は、テレビは「時間軸に沿ってシーケンシャルにしかアクセスできない、かつての磁気テープ装置と同じような、本質的な効率のボトルネックを内包している」ものであり、「情報の受動的消費」しか許してくれない。それに対し、インターネットを使った「情報のオン・デマンド収集」では、目的の情報に素早く辿り着ける「ランダムアクセス」が可能になる。だから、未来は「テレビがない家庭」があたりまえの光景になるだろう、と語っている。
自分もテレビ観てないなぁ。F1と野球とサッカーの中継をのぞけば、かれこれ3年近くスイッチを押していない。今ふとテレビの電源を入れようとしたら、うんともすんともいわないでやんの。いつのまにやら壊れていた。もちろん、自分は根っからのネットジャンキーなので、問題はないし、なにも焦らない。だから、石井さんの問題意識には強く同意する。でも、その記事を読むと、なにかがひっかかる。
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1月 23

Ricoh GR Digital / Naoshima / Kagawa.
『目からウロコの幸福学』。これは買いです。俗っぽいタイトルとは裏腹に、素晴らしい本。圧倒された。「なにか心理学系でおすすめの本ない?」と聞かれれば、まず間違いなくこの本を薦めるだろう。某進化系Blogで2007年1位と推薦されていたから買ってみたけど、本当に目からウロコがぼろぼろ零れた。実証心理学の醍醐味がぎっしりで、自信をもってオススメできる。そこら辺の新書とは格が違う。なぜそれほど売れていないのか理解できない。編集者と訳者が可哀想。1.学術的に妥当、2.そのくせ読みやすい(訳も的確)、3.内容の密度が濃い、4.説教臭いところが一切ない。この本を読んでつまらなければ、俺が弁償します!ほんとに。学生、社会人、研究者、誰が読んでも感じるところがあるはず。(言語学や心理学に携わっていない)一般の人にとっては、あのスティーブン・ピンカーの本より刺激的(記述の感じは似ている)。
著者のダニエル・ネトルはイギリスのニューキャッスル大学の心理学助教授。日本語に翻訳されたものとしてはこの本のほかに『消えゆく言語たち』があるけれども、現在は感情、性格、精神障害、性差を研究しているという。この本は、「人間が幸福を感じる心理的メカニズムはどのようなものなのか?」を、進化心理学をベースとして科学的に探ったもの。つまり、この前の『愛するということ』みたいな「いかに生きるべきか?」という倫理的な問いをひとまず封印して、「いかなるときに人は幸せを感じるのか?」をひたすら科学的(統計的・実験的)に考察した本。やばいよこれ。これこそ本物の「幸福の科学」だわな。科学の醍醐味も、(結果的に)いかに生きるべきかという人生論のヒントも、ぎっしり詰まっている。
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1月 20

Ricoh GR Digital / Nagoya.
自分用東京アート候補リスト2008。全部は行けないし、もちろんこれ以外にも面白いものはたくさんあるのだろうけれど、骨太方針としてメモ。やや某所よりコピペ。なんといっても、9月13日~11月30日までの横浜トリエンナーレは、お祭りなので楽しみだなぁ。映画や音楽については別の機会に。
■アントワン・ダガタ 「SITUATIONS」
ラットホール・ギャラリー、表参道
開催中~2008年2月1日
■ピピロッティ・リスト 「Karakara」
原美術館、品川
開催中~2008年2月11日
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1月 20

Nikon FM3A / Ho Chi Minh / Vietnam.
上の写真はベトナムを旅しているときに撮ったものだけれども、心底素敵な光景だった。記念写真を撮るために、思い切り着飾って、精一杯の撮影場所を選択して、微かに緊張しながら笑みをたたえ、二人が共に刻む現在の痕跡を粒子として定着させようとする。写真に密度が充満する瞬間だ。さて。「愛」とは何だろうか。「愛する」とはいかなる行為だろうか。今日は1956年に出版されたエーリッヒ・フロム(Erich Fromm)の名著、“The Art of Loving”(直訳すれば『愛の技術』)を少しだけ書評してみたい。「愛」という概念を通して、人生そのもの、いかに生きるべきかを論じた本。人間ならば、誰であれ、かならず一度は目を通しておくべき書物だと感じた。
いちばんベタに考えれば、恋とは求めること、愛とは与えること、といえるだろう。そうだ。そのとおりだ。たしかに愛とは与えることだ。すんなりと腑に落ちる。でもさ、与えるって、いったいなにを?どうやって?
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1月 18

Nikon FM3A / Agfa Vista100 / Ho Chi Minh / Vietnam.
Amazonで高評価な『自分の仕事をつくる』を友人に借りて読んだので、さらっと書評。文字数が少ないので、1時間ちょいあれば読める本。ひとことでいえば、マルクス主義的な人間疎外されないものづくりのあり方を、現代の職人たちに見出したフィールドワーク本。あるいは、お金のためではなく自分が妥協しないものづくりに命を燃やす人にインタヴューするという点で、実存主義的な労働のあり方を具体的に探ってみた本。以前書いた岡本太郎の思想をリアルに実践している人たちのお話、と言っても良い。どちらかといえばデザイン系中心。
巷にあふれているくだらない自己啓発本(たとえば『7つの習慣』)やLifehackの記事を読むよりは、1000倍マシな真の「自己啓発本」。仕事とは何だろうか?と考えている人は、ぜひ読んでみてくださいな。西村さんは本書では「働き方研究家」と名乗っているけれど、ググってみると、どうやらプランニング・ディレクターらしい。著者の問題意識はつぎのとおり。(以下、[]記号内は引用者の補足、強調部も引用者のもの)
人間は「あなたは大切な存在で、生きている価値がある」というメッセージを、つねに探し求めている生き物だと思う。(中略)「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。(中略)この世界は一人一人の小さな「仕事」の累積なのだから、世界が変わる方法はどこか余所にではなく、じつは一人一人の手元にある。多くの人が「自分」を疎外して働いた結果、それを手にした人をも疎外する社会が出来上がるわけだが、同じ構造[を反転させること]で逆の成果を生み出すこともできる。問題は、なぜ多くの人がそれをできないのか、ということになるが、まずはいくつかの働き方をたずねるところから始めてみたい。
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1月 17

Ricoh GR Digital / Onomichi / Hiroshima.
かつて哲学者のジョン・スチュアート・ミルはこう言った。「私は眼鏡を信用している。しかし目もまた必要だと思う」――この台詞はなにを示しているのか。眼鏡と目の緊張関係こそが現代世界の危機である、とサイモン・クリッチリーは述べる。今回は、2004年に岩波書店から出版された『ヨーロッパ大陸の哲学』(サイモン・クリッチリー著)を書評してみたい。「1冊でわかるシリーズ」の一冊だけれども、軽薄なキャッチの射程を超えた、実に素晴らしい本。
眼鏡とは「知識」の比喩であり、目とは「知恵」の比喩である。あるいは別の言い方をすれば、眼鏡とは事実(What it is? )を探求する哲学の比喩であり、目とは人生の意味(What it should be? )を探求する哲学の比喩である。現代は科学の時代だ。その反動として、科学の拒絶も勢いを増している。人生の意味すら脳科学や進化論に求めてしまう<科学への心酔>ではなく、病気の原因すらスカラー波や占星術に求めてしまう<科学の拒絶>でもない、その中間にある「第3の道」を探るため、哲学になにができるのだろうか。トンデモ科学(疑似科学)の問題を深く考えたい人もぜひどうぞ。
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