9月 10

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 当然だけど忘れがちなことをメモ。closedかopenかが現代政治の争点だ、と先日書いた。openならチャンスはあるのか?といえば、単純にそういうわけにはいかない。少なくとも、投資やビジネスの観点からいえば、closedなものにも、openなものにも、旨味はない。完全に開かれてしまったら、もはやおしまいなのだ。closedからopenへとまさに今移行している、という移行(transition)状態を見抜くことが投資の鉄則なのだと思う。

 でもこれって当たり前のことを言っているだけだ。そう、innovationという手垢にまみれた単語が指し示す内容を。innovationの蓄積によって人類は進歩してきた。が、innovatedされた形容詞的状態に投資的な妙味はない。innovatingという現在進行形の運動を見抜かなければ、稼げない。innovatedされることによって、社会全体の効率性がそれ以前よりも格段に上昇し、世界全体として富の総量が増える(だから世界経済は歴史的に成長してきた)。だが、innovatedされたものは前提条件として沈んでしまい、とりたてて投資する価値のないものとなってしまう。どの分野においてもそうだ。学問に関していえば、「世界は言語的・社会的に構築されている」なんて今ごろ叫んだところで、ただ虚しいだけだ。

 上図は、いちカイにヤリさんのこちらのエントリーから拝借させていただいたものだが、エヴェレット・ロジャーズ(1962)の『イノベーションの伝播』という本が出典だそうだ。社会の2.5%の人間が革新者(Innovators)となる。Innovatorsが開発した技術や知識がinnovatingなtransitonを実現できる!ということを的確に素早く見抜けるEarly Adoptersが13.5%。これは凄いことになってきた!と次に気づき始めるEarly Majorityな層が34%。ここまでで全体の半分を占める。その後、そのトレンドを後手後手で追いかけるLate Majorityな層が34%。残りのうすのろま(Laggards)が16%。

■ イノベーター(革新者):冒険的で、高等教育を受けており、複数の情報ソースを持ち、リスクを厭わない
■ アーリー・アダプター(新し物好き):仲間のリーダー的存在で、人気者で、学がある
■ アーリー・マジョリティー(先行している多数派):思慮深く、知人などのコネが多い
■ レート・マジョリティー(遅行する多数派):疑い深く、心配性で、伝統を重んじ、社会・経済階級的には下層の人が多い
■ ラガード(遅れている人):ご近所の人から情報を仕入れる、負債を抱えることに対する不安をもっている(参照

 はてなブックマークなんかはまさにEarly Majority層の巣窟だな、という気がするのだが(笑)。まぁそれはおいておいて、投資やビジネスで大きく稼ぐには、Innovatorsになるのは無理だとしても、何とかEarly Adoptersの層には位置していたいものだと思う。前半16%になんとしても食い込みたい。まぁ、BRICs投資なんてすでにEarly Majority層からLate Majority層に移行しようとしている段階なのかもしれないが。(もっとも、BRICs投資は、「closedからopenへの移行」というtransitionな夢に満ちている)

 さて。innovationによってclosedからopenへ移行するとき、「openになりすぎる」という行き過ぎな状態が発生することが多い。これが、いわゆるバブル状態。行きすぎた状態を見て、InnovatorsやEarly Adopters、つまり素早くトレンドを見極めた層から徐々に逃げて(=利益確定して)いく。バブル崩壊に巻き込まれるのはいつもトロい人たち(Late MajorityやLaggards)だ。イノベーションの現在進行形(closedからopenへの移行運動)を見抜けず、イノベーションがあらかた完了してしまってから(openになってしまってから)投資する層は、いつも割を食う。

 今回のサブプライム暴落の理由に関して言えば、おかねのこねたさんのこちらの記事が秀逸にまとめられているように、以下の点に要約されるのだと思う。

1.不動産の所有と経営を分離できる、REIT(不動産投資信託)という商品が開発された(→不動産に資金がたくさん集まる。不動産バブル)

2.不動産ローンの証券化という金融技術が開発された(→リスクの見かけ上の分散によってガードが甘くなった)

3. 1(不動産関連に資金を出す投資家の激増) +  2(長期間資金が固定化するというローンの特性から開放された銀行の向こう見ずな金貸し)によって、「投資家の需要があるんだから、粗製濫造でも良いからドンドン商品の種(=投資用のビル、住宅ローン)を創っちゃえ!という態度に変えてしまいました。」

 このように、REIT(不動産投資信託)や、不動産ローンの証券化といった、金融技術のイノベーションの行きすぎが、今回の暴落を生んだのだと思う。closedからopenへと変わる移行状態に投資した人たち(InnovatorsやEarly Adoptersたち)は、これまで、今回の暴落をものともしないくらい利益を稼いだのだろう。他方、openになってから投資を行った、Late Majorityな人たちは割を食った。

 もちろん、だからといって、openになってしまったら、Innovatedされたものが無くなるわけじゃない。REITも不動産ローンの証券化商品も、無くなることはないだろう。ただ、バブルが弾けた後は、適切な形で(=投資妙味が少ない形で)、「前提条件として沈んで」、残っていくだけだ。バブルがもたらしたプレミアムが剥がれて、十分に安くなってから、バリュー投資家が拾っていくのだろう。そして、あとから振り返ってみれば、あるinnovationの結果、世界(社会)全体としての富の総量は増えている。だから世界経済は歴史的に成長を続けてきた。

 とにかく、1.closedからopenへといままさに移行しつつある対象を見極めること、2.Early Adoptorsに何とか食い込むこと(前半16%に位置すること)、これに心血を注いで生きていきたいと思うのだ。openになったものは、安心をもたらす。米国株に投資する場合、南アフリカ株に投資する場合にくらべて、安心できる。でも、安心できると言うことは、つまらない投資(生き方)をしているということだ。不確定性や不安に耐えられる勇気と、リスクコントロールの技術を身につけ、それら支えとして果敢に挑んでいきたいなぁ。自分がリスクを取ってinnovationの萌芽に投資することによって、結果的に社会全体の富の総量が増えるとしたら、それはそれは素敵なことにちがいない。


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