1月 31


(c)Magnum Photos

 表参道のRATHOLE GALLERY(ラットホールギャラリー)でやっているアンドワン・ダガタのSituationsという写真展に行ってきた。まず、ラットホールは無料です。この時点ですでに幸せ。そして写真も、いや、良かったぁ。身体感覚むんむん。

 アントワン・ダガタは1961年、フランス・マルセイユに生まれ、ニューヨークのICP(国際写真センター)でナン・ゴールディンやラリー・クラークなどに写真を学んだ後、写真家としてのキャリアをスタートさせた。2004年よりかのマグナムフォトに参加し、現在は準会員として定住地を持たず世界中を移動しながら活動しているそうな。だから今、46歳なのか。ダガタはこう言う、“写真は嘘以外のなにものでもない。時間は操作され、空間は切り取られ、そして偽善と虚構の間で選択を強いられた偽りの伝達手段となる”、と。

 以前、「デジカメ写真のレタッチ」という記事で紹介したように、”写真は、現実を撮ったもので、現実ではない。現実を巧妙に写しているようで、実は新たに作られた、ペラペラの一片の現実だ。それは、スライスされた極薄の世界だ。決して現実なんかじゃない。だからこそ、この新たな世界に息吹を吹き込む必要がある。”そして、”写真という装置そのものが、情報を減らす機械だ。世界という無限の情報から、時間を消滅させる。そして、音も、匂いも、手触りも、味覚も、そのうえフレーミングして、世界という空間の99.999999…を捨て去っている”。

 つまり、写真とはなによりも、消去する作業。世界を消去し、逆に被写体の輪郭と核を浮かび上がらせる営みだ。世界を消去するやり方は写真家によって無数に存在し、だからこそ、偽りの現実がそれぞれに立ち上がってくる。


(c)Magnum Photos

 アンドワン・ダガタは、粗い粒子、ブレ、ピントを外したボケを積極的に用いて、現実を消去してみせる。自分は、彼の写真に魅入ってこう感じた。まず彼は、人やモノが抱えている輪郭を曖昧にすることによって、人やモノ同士の「つながり」を回復させる。輪郭とは、あるものとあるものの分離であり、拒絶なのだから。「つながり」を回復したがゆえに、柔らかく、グラデーションに満ちた、混沌とした世界が立ちあらわれる。でも、混沌とした輪郭のない世界では、逆に、肉体性が際だってくる。曖昧な世界の中でも、人間という物体の持つ重みは、決して消えてしまうことはない。人間の肉体は、重い。つくづく、重い。流れてしまう世界のただ中に、肉体は物体として鎮座している。そんなことを感じさせられた。

 「イメージが氾濫する現代社会へのアンチテーゼ」なんていう社会的な論評はむしろ余分といえるだろう。肉体そのものを、舌なめずりして、じっくりと味わった方が「美味しい」。今回の写真展に関連したinterviewがここここに載っている。興味ある人は、ぜひ読んでみてください。色遣いも素晴らしいし、大好きになってしまった、ダガタを。残念なのは、この写真展が明日(2月1日)の20時で終了してしまうこと。写真好きな人は、ぜひぜひ。


(c)Magnum Photos


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