1月 01

Ha?
Ricoh GR Digital / Vietnam.

 Economist誌の“The World in 2008″からダイジェストで記事を紹介した前回のエントリーのつづき。今回は翻訳ではなく、独断を混ぜながら自分の言葉で中身を紹介していく形を取ります。Buying and sellingという記事に書かれているけれども、おサイフケータイに関して、現在日本が世界の最先端を走っている。日本ではSonyが開発したFeliCaという技術が主流。では、日本以外はどうかといえば、業界の標準規格を長らく欠いていたり、携帯のキャリアと銀行がビジネスモデルについてもめていたりしたので、これまでおサイフケータイ的な動きはあまり見られなかった。しかし、2008年には、“Near-Field Communication” (NFC)という標準規格が業界を大きく牽引していくだろうとEconomist誌は予想している。NFCは、2003年12月に国際標準規格となり、ISO14443 Type A(MIFARE)やType B、FeliCaといった既存の非接触型ICカードと互換性がある非接触IC技術のこと。つまり、FeliCaの兄貴分。

 でも、投資家の自分にとって興味深いのは、むしろCash on callという記事だ。この記事は、携帯決済が貧しい発展途上国でこそ莫大なポテンシャルを秘めていることを指摘する。先進国にて展開されている業界の最先端の話よりも、洗練度は劣る既存の技術を活用して途上国を含めた全世界にいかに幅広くアプローチしていくかという話の方が、投資家にとっては断然面白い。世界の「弱者」が直面している生活上の問題にフォーカスするビジネスは本当に魅力的だ。それは倫理的に魅力的ということではない。”今の世界で「濡れ手にアワ」のように儲かるインベストメント・アイデアの多くはそういう多くの人が直面している不都合に対する取り組みに隠されているから”。そして、”これらの問題はいずれもチョッとお金を投じて不都合な状況に取り組むだけで沢山の人々を幸せにすることの出来るプロジェクト、つまり資金効率が良い”から(以前書いた記事)。この言葉を想い出そう――「あきらかに世の中の多くの人にとって問題であるにもかかわらず、株式市場の文脈では無視されてしまっていることがら、、、そういうところにチャンスやリスクがある」。

 せっかくだから、やっぱり意訳しておこう。ほぼ全訳。太字強調部は訳者。

Cash on call

 最貧国では、銀行の支店はめったになく、もしあったとしてもある支店と別の支店の距離がすごく離れているし、多くの人は銀行口座自体を持っていない。だから、金融取引に携帯電話を用いることに、大きな意義がある。金融サービスへのアクセスを欠いているので、お金の借り入れコストが上昇するし、企業家精神も阻害されてしまう。大金をキャッシュで持ち歩いたりベッドの下に現金を隠しておくのは危険だ。そして送金にも大きなコストがかかってしまう。モバイルバンキングと携帯決済を使えば、これらの問題すべてを解決することができる。そして、銀行とは異なり、携帯電話は急速に普及している。

 ビジネスのポテンシャルを示す良い例は、ケニアだ。そこでは、M-PESAと呼ばれる携帯決済システムが2005年に試験的に開始され、2007年の5月には本格的にスタートする。それはケニア最大の携帯電話会社であるSafaricomによって運営されている。Safaricomはボーダフォン系列の会社だ。M-PESAにサインアップすると、Safaricomのシステムにお金を預けたり引き出したりすることができる。他の人々に送金することもできる――お金が入金されると、受取人の携帯電話にメッセージが届くようになっている。

 とても単純な仕組みだ。でも、携帯電話によって送金できると、あらゆる事柄が可能になる。日雇いの人は携帯電話で支払いを受けられるし、タクシーの運転手は現金を貯め込まなくてよくなるし(訳注:最貧国のタクシーはとにかく強盗に狙われやすい)、急な用があればすぐに友人や家族に送金することができる。旅行のときなんかにも便利だ。ボーダフォンはインドでも同様なサービスを立ち上げることを検討している。

 同様なスキームとして、南アフリカのWizzitや、フィリピンのG-Cashをあげることができる。Wizzitはよりバーチャルな銀行に近い。支店は1個もなく、支払いと送金は携帯電話で済まし、顧客にはデビッドカードを発行する仕組みだ。これは、発展途上国にとって、驚くほどコストの低い銀行のモデルなのだ。Ms Coyle氏は言う。大事な点は、携帯電話を用いた決済システムが、裕福な人たちの生活を便利にするだけなのか、それとも貧しい人たちに初の金融サービスを提供するようになるのかだ、と。これまでのところ、非常に前途有望であるように思われる。もちろん、いくつかの国では携帯決済システムの発展を妨げる規制があったりはする。けれども、それらはきっと変えていくことができる。

訳注:この図は、水色が「10万人あたりの銀行の支店数」、オレンジ色が「10万あたりのATMの数」、赤色が「100人あたりの携帯電話契約者数」をあらわしている。ATMが異常に多いアメリカを除けば、携帯銀行モデルがいかに有望であるかがわかるだろう。

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 さて、以上が(ほぼ)全訳だけれども、まさにあきらかに世の中の多くの人にとって問題であるにもかかわらず無視されてしまっていることがら…そういうところにチャンスやリスクがあるわけですね。銀行自体がない、銀行口座自体がない、というアクチュアルな欠如を埋めると、莫大なビジネスチャンスがやってくるし、人々の暮らし向きも良くなる。つまり、金稼ぎと倫理のwin-win、持続可能なエゴが可能になる。金儲けのために奮闘することは決して悪い事じゃない。困っている人たちを「利用」して堂々と金稼ぎを企てれば良い。倫理や人権だけ騒ぎ立てて、新自由主義や資本主義を盲目的に敵視し、持続可能なモデルをなにも構築しようとしないモラリストなんて、糞喰らえだ。

 他方、先進国における技術とビジネスモデルの関係について一番面白いことが書かれていたのは、Freeconomics(無料の経済)という記事だ。Wiredの編集長が書いた文章。これについてはすでに全訳された方がいるみたいなので(前半後半)、そちらをぜひ読んでみてくださいな。

 今日のインターネットにおいて支配的なビジネスモデルは、何かを無料で与えることによってお金を儲けている。その多くは、無料のコンテンツを使って視聴者を集め、その視聴者へのアクセス権を広告主に売るという旧来メディアのモデルにすぎない。しかし、無料サンプルモデルに分類されるものも増えている:それは、デジタルのサービスをオンラインで提供することがかなり安価になったので、1%の顧客が「プレミアム・バージョン」にお金を払ってくれさえすれば、99%の顧客が無料バージョンを使っていても問題にならないからだ。巨大な数の1%もまた、巨大な数になり得るのである。(中略)

 これらはすべて、1つのパターンを刻んでいる。1人の顧客に対応するコストがゼロに向かいつつあるとき、賢い企業はお金を請求しなくなる。今日、破壊者のモットーは「他社が課金しているものを、最初に無料で提供せよ」である。テクノロジーに耳を澄ませば、それはよく分かるだろう。(訳・Sotaの日記さん)


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