1月 03

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Ricoh GR Digital / Ho Chi Minn / Vietnam.

 Economist誌の“The World in 2008″からダイジェストで記事を紹介したpart.1part.2のつづき。最終回です。まず、Scienceのセクションから「宇宙の民営化」事情を綴った記事を全訳。これは年初に相応しく、いろいろと夢に満ちたお話。続いて、Businessのセクションから世界の石油事情とOPECについて書かれた記事を全訳。ガソリンや商品一般の価格も高騰していることだしなぁ。

The next space race

 NASA、ESA、JAXA、RKA …これらは国が運営している有名な宇宙機関であり、過去50年間、宇宙探査を支配してきた。しかし、今後50年のあいだに、新しい名前がきっと出現する。半世紀後に歴史を振り返れば、起業家たちの名前を想起することだろう。民間セクターで、宇宙を、開発と莫大な富を創造するチャンスだと捉えていた人たちの名前を。

 2つの根本的な現実が宇宙探査を前にすすめるだろう。第1に、野心があり明確なビジョンを持っている個人にお金が集まってくるという現実だ。彼らの多くは、宇宙を冒険的な場所であると同時にお金を稼ぐことができる場所だと見ている。かつては国家しかできなかったけれど、現在は個人からも必要資金を集めることができる。

 第2に、地球の資源は有限であり枯渇しかけていると、企業や投資家たちが実感しつつあるという現実だ。でも、宇宙では、地球上で価値があるとされているものすべて――メタル、ミネラル、エネルギー、そして不動産――がほぼ無限大に供給される。宇宙での作業がもっと簡単になるにつれて、企業は宇宙の資源に目を向けるようになるだろう。そしてかつては広大な不毛の地だと思われていた場所が、次なる「ゴールドラッシュ」に沸くだろう。

 アラスカは見事なアナロジー(類似例)を提供してくれる。かつてアラスカは役に立たない領土だと思われていた(1867年にアメリカの国務長官William Sewardはロシアに720万ドルを支払ってアラスカを手に入れたけれど批判された。そのことは「Sewardの愚行」として有名だ)。でも、それからアラスカは1兆円規模の経済圏に成長した。輸送インフラが整備され、金、石油、木材、そして漁業が非常に採算性の高い事業になった。同様なことが宇宙でも生じるだろう。直径0.5km四方の小惑星は、ニッケル、鉄、プラチナ基の金属が取れるので、20兆ドル以上の価値を持っている。

 経済的な動機に加えて、技術が臨界点に達しつつあり、宇宙探査は人類進歩の必然的な構成要素になりつつある。ムーアの法則はコンピューター技術の指数関数的な発展を可能にしてきたし、それが逆にほとんどすべてのテクノロジー産業の指数関数的な成長に結びついてきた。ロケット推進技術に関するブレイクスルーが生じれば、わたしたちがより遠く、より早く、そしてより安全に宇宙へ行くことができるようになるだろう。ロボット工学は、宇宙を探査し、地図を作成し、資源を回収する手助けをしてくれるだろう。コミュニケーション技術と生命維持技術が発展すれば、さらなる有人ミッションや、最終的にはたとえば火星のような他の惑星の植民地化も可能になるだろう。そしてこれら技術のすべては、リスクを進んで引き受けて誰もやったことのないことをやろうとする起業家たちの手中にある。

 最近、X PRIZE 財団はGoogle社と共同で声明を発表した。賞金総額 3000 万ドルを賭けて、月へのロボット飛行を競う Google Lunar X PRIZE だ。 民間所有のロボット探査機を月面に着陸させて、月面を 500 メートル以上探査し、動画、画像、データを地球に送信するという任務を世界中の民間企業が競い合うことになる。驚くべきことに、発表から2週間の内に、25カ国から190を超えるリクエストを受けた。彼らは新世代の起業家たちであって、AppleやDELLがコンピューター産業を改革したのと同じく、宇宙探査の世界で革命を起こすことだろう。

 決定的に大事なのは、彼ら起業家たちが、現在宇宙開発を主導している灰色のひげをたくわえた人たちよりも若いということだ。宇宙船アポロ号が開発されたとき、エンジニアたちの平均年齢はたった26歳だった――――それは決して今日の宇宙工学産業の平均年齢、50歳以上ではなかったのだ。同様に、ドットコム産業は、20歳そこらの天才による、なにものにも制約を受けない自由な発想によって打ち立てられた。若い実行家は、なにが不可能なのかを知らない。だから、大胆な解決策を試みるとき、リスクを怖れない。

 政府の役割がなくなると言いたい訳ではない。政府は、純粋科学と、いくつかの未知なる最大の疑問――たとえば火星に生命体は存在するのか?――に取り組む上で、決定的に重要な仕事をし続けるだろう。政府は、[宇宙開発を推進する民間企業にとって]大のお得意さんになるべきだし、オペレーション・ビジネスからは身を引くべきだ。たとえば、政府機関はパソコンを独自に組み立てはしないし、独自の航空会社を運営したりもしない。同様に、将来、政府は商業的に運営されている宇宙船の座席券を買うようになり、ビジネスとして運営されている宇宙ステーションに乗船するようになるのだろう。さらに、政治家たちは、宇宙と宇宙植民地を統治する法律を決定する必要があるだろう。たとえば、宇宙に進出した植民者たちが自営して独立を宣言したならば、どのように対処すれば良いのか?

 このように、今後50年のあいだ、わたしたちはSF的なフィクションが現実になる姿を目の当たりにするのだろうか?極めて高い確率でそうだといえる。もちろん、もっとすごいことが起こるかもしれない。宇宙へプライベートで観光旅行に行くことが出来るようになるだろう。民間の資金で財務をまかなう調査基地を、夜空の月の上に、当たり前のように見ることができるようになるだろう。火星に向けた初の片道のミッションが実現するだろう。宇宙初の生命体をきっと目にすることだろう。採鉱が月で流行することだろう。小惑星の天然資源を巡って、皆が権利を主張しあうことだろう。そして、そうしたことが積み重なるにつれて、わたしたちがまだ理解していないもっと多くの可能性が、宇宙のフロンティアから姿をあらわしてくるだろう。次の50年は、きっと、わたしたちが宇宙文明を築き上げる期間になるのだ。

OPEC rules again

 過去数年の多くのあいだ、エネルギー問題の専門家たちは、毎年採掘される石油の量がピークに達しつつあり、まもなく急激に石油が枯渇してしまうのではないかという疑念に捕らわれてきた。”peak oil”の恐怖は、原油価格を記録的な高値まで押し上げてきた。しかし、ピークに達したのは石油の産出量ではなく、原油価格をコントロールするOPEC 1)石油輸出国機構:Organization of the Petroleum Exporting Countries:石油産出国の利益を守るため、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5カ国の原加盟で1960年9月14日に設立された産油国の組織 というカルテルの権力なのだということが、2008年、徐々に明らかになっていくだろう。

 1970年代にOPECは、今日のお金に換算すると1バレル100ドルのところまで原油価格を押し上げ、世界景気を後退させた。だが、自らが招いたオイルショックは、結局のところ自らを滅ぼすものだということが結局明らかになった。先進国は、石油のより効率的な利用方法を探し始め、OPECが産出する原油への需要の伸びが一気に鈍ってしまったからだ。西欧の石油会社と、OPEC諸国の国有企業は、同様に設備超過を抱えてしまったのだ。

 原油価格が完全に崩壊するのを防ぐため、OPECは多くの採掘装置(リグ)を使用停止しなければならなかった。一方、OPECに加盟していない国々は、好きなだけ石油を産出して、OPECの犠牲のもとに利益を得た。だから、世界全体の石油埋蔵量に対してOPECが占めるシェアは増加したものの、実際の石油生産のシェアは減少した。さらに悪いことに、OPECに加盟している多くの国が、インチキをする誘惑に負けて、お互いに取り決めた割当量よりもたくさんの石油を産出しはじめた。こうした背景があって、カルテルが原油価格を高止まりさせることが難しくなってしまったのだった。

 この衰弱のプロセスは、近年になって崩れた。中国・インド・中東といった、好景気に沸いている地域の、一見とどまるところを知らない需要のおかげだ。それらの地域は、世界の石油採掘の余剰能力をほぼ全部吸収してきたし、これからますます石油を必要とするだろうから、たとえアメリカとヨーロッパの経済がよろめいたとしても、2008年の石油需要は大して減少しないだろう。

 理論的にいえば、西欧の巨大石油企業は、より多くの油田を発見・開発することによって、増大する需要と目のくらむような原油価格に対応すべきだ。しかし、彼らはこれまでアクセスしやすい国で容易にくみ上げることができた石油のほとんどを採掘しつくしてしまったため、供給を拡大しようにも、簡単な選択肢は残されていない。かわりに、彼らは途方もなくコストがかかるプロジェクト――たとえば北極の氷の下や粘度の高いコール堆積物から原油を産出する――を強いられている。

 [石油の供給を増大させるために]唯一有望な場所は、旧ソ連地域やアフリカ地域だ。そこにはOPECの支配が及んでおらず、現代技術を駆使した調査がまだはじまったばかりだ。だが、もっとも見込みのある地域を抱えている国々では、ナショナリスティックな動きが強まってきている。たとえば、ロシアやカザフスタンは外国の石油企業を困らせてきたし、アンゴラはOPECに加盟してしまった。だから、石油メジャーが産出量を増やせないのは驚くことではない――彼らは来年も限られたチャンスの中でもがき続けるだろう。エンジニアや装置も十分ではない。

 一方、歴史的にOPECはつねに真っ先に産出量を抑制してきたから、比較的簡単に採掘することができるたくさんの石油貯蔵量を持っている。彼らは単独で素早く原油生産量を増やすことができる――もっとも、原油価格の下落を防ぎたいから、新たな油田を開発するとしても多分ちんたらやるのだろうけれど。2008年、OPECは1バレルあたり60ドル~80ドルを目標にしているのだろう。これはこの10年間の初期のころに比べれば、およそ3倍の高値だ。

 OPECというカルテルのメンバーは、世界の景気が減速しはじめるちょうどそのときに産出量を増やしてしまうことを、特に怖れている。低い需要と高い供給が組み合わさると、原油価格が急落しかねないからだ。だからOPECは原油価格を高止まりさせることによって世界経済の減速を悪化させる可能性が高い。

 この強気な姿勢は、巨大石油輸入国との数多くの摩擦を引き起こすだろう。OPECの会議は1970年代と同じだけの注目と非難を集めるはずだ。アメリカの大統領候補者はサウジアラビアを公然と非難するだろうし、もちろんOPECの中でもより攻撃的なベネズエラやイランについては言うまでもない。

 他方、生物燃料(biofuels)の支持者たちは、高い石油価格に言及することだろう。エタノールやバイオディーゼルにより多くの助成金を求めることを正当化する際に、OPECが助けとなる。燃費の良い車やハイブリッドカーは爆発的に売れるだろうし、ガス食い虫のSUVはますます売れなくなるだろう。おそれをなした西欧諸国の政府は、エコドライブを呼びかけたり、可能性を秘めた奇跡の燃料や乗り物を研究する科学者たちに資金を投じることだろう。要するに、近年のOPECの優勢な状態は、1970年代の束の間の絶頂期と同様に、自己破壊の種を胚胎しているのだ――――でも、そんなことをいったところで、2008年に高いガソリン代にあえぎながら車を運転する人にとっては、あまり慰めにはならないだろうけどね。

References   [ + ]

1. 石油輸出国機構:Organization of the Petroleum Exporting Countries:石油産出国の利益を守るため、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5カ国の原加盟で1960年9月14日に設立された産油国の組織

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