12月 05

rival
Ricoh GX100 / Seibu Tojyo Line / Tokyo.

 ネット書籍サービスなるものを中経出版が始めたらしい。同出版社の本の裏側に付いている登録番号を入力すれば、同じものを電子書籍としてweb上で読むことができるそうだ。つまり、かさばる本に部屋を圧迫されることがなくなるわけ。これは画期的だと思う。今までに購入した本のせいで、広い部屋を借りざるをえず、無駄に家賃が高くなっているわけだから。

 そもそも、みなさんは、書籍の内容をどのように記憶に蓄えているのでしょう。自分はマルクスほど記憶力が良くないので、一読して書籍の内容が頭に丸ごと残るということはありません。ある本を読んだとき、自分の脳内に刻まれるのは、「だいたい○○に関連した内容が○○という本に書いてあった」という程度のこと。たとえば、「見る/見られるという関係についてのメルロ=ポンティの議論を批判した文章が、あの本に書いてあったな」という程度に。つまり、脳内に蓄積されるのは、あくまでショートカットアイコン(リンク情報)であって、実ファイルの内容まで記憶することは出来ないわけです。本を読むたびに、脳内のリンク集が充実してくる。でも、リンク先の内容(実データ)は、書籍を参照しないとわからない。だから、本を捨てられない。

 記憶や思考は脳内で完結するものではないはずです。パソコン、紙、鉛筆、ファイル、その他何でも良いのだけれども、物質として環境中に蓄えられている資源の助けを借りなければ、記憶や思考は完成しません(複雑な計算を筆算なしにできますか?手帳なしにスケジュールをこなせますか?)。認知は、身体と環境をまたがって、分散しながら存在している。

 さて。書籍のあるべき形態について考える場合、ポイントは次の6点だと個人的に思います。1.携帯性(持ち運びやすいかどうか)、2.目への優しさ(読みやすさ)、3.加工性(メモや線やしおりを書き込めるかどうか)、4.入手性(すぐに簡単に手にはいるかどうか)、5.検索性(当該箇所をすぐに探し出せるかどうか)、6.保存性(かさばらずに保存できるかどうか)。

 従来型の紙媒体の書籍が優れているのは、「携帯性」「目への優しさ」「加工性」です。他方、パソコン/ウェブ上のデータとしての電子書籍が優れているのは、「入手性」(ダウンロードで買える)、「検索性」(キーワード検索できる)、「保存性」(かさばらない)ということになります。

 両者の利点を統合する必要があります。もし手軽かつ安価に両者の利点を統合できるシステムがあらわれたならば、マーケット的な成功を勝ち取るのでしょう。現時点でのひとつの試みは米AmazonのKindleという電子書籍端末ソリューションで、もしかしたら、これはiPod/iTunes的に化けるかもしれません。もちろん、紙の書籍を自力で電子化する人たちもいて、彼らはScansnap(書籍をバラして取り込む)かOpticBookを用いるのが通例であるようです。

 でも、とにかく言いたいのは、先述したように、1.脳内のリンク作り(一読)、2.実データの保存(後の参照)、という読書における2つのフェーズを安価かつ手軽に実現してくれるシステムが欲しいということ。冒頭で紹介した中経出版の試みは、まず紙媒体の書籍を購入するわけだから、1.脳内のリンク作りの際に、「携帯性」「目への優しさ」「加工性」という利点を持つ。一読後は本を捨てても構わないしウェブ上でキーワード検索できるわけだから、2.実データの保存の際に、「検索性」「保存性」という利点を持つわけです。この取り組み、他の出版社にも拡がっていくといいなぁ。あぁ、本に埋もれていない広々とした部屋に住みてぇー!


1 Star2 Stars3 Stars4 Stars5 Stars (No Ratings Yet)
Loading...Loading...
5,550 views | add to hatena hatena.comment 1 users add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user |  http://plaisir.genxx.com/wp-trackback.php?p=133



Amazon Related Search

Leave a Reply