11月 19

UNIQUE
Ricoh GX100 / Ochanomizu / Tokyo.

 音楽をぼーっと聴く。生活が七色に彩られる。泣いたり笑ったりする。まったく素敵なことだ。でも、それ(ただ音楽を聴く行為)は、音楽に対して少し受動的すぎるかもしれない。ときどき、それでは物足りなくなる。ある曲を聴いて心を揺さぶられた、その悦びを、なんとかして表現したい、そう突き動かされることがある。その気持ちを偶然抱えてしまった、多くの人々は、音楽に対して能動的に関わろうとする。

 音楽に対して能動的に関わるやり方は、おそらく10通りあるし、逆に言えば10通りしか存在しないと思う。1.コピー演奏(バンドを組んで自分で演奏してみる)。2.ダンス(楽曲に対して身体で働きかける)。3.収集(コレクターとなり対象を物象化して所有する)。4.レビュー(自分の言葉で対象を解体・再構築する)。5.選曲・趣味の誇示(たくさんの対象をセレクトし編集者的に関わる。iTunesのプレイリストを作ったり、LastFMで趣味を羅列したり)。6.DJ(たくさんの好きな曲の好きな部分を切り取って独自のやり方でつなげたりする)。7.リミックス(好きな1曲を自分なりに解体・再構成する)。8.オーディオマニア化(好きな曲を流す装置にこだわることによって対象を愛でる)。9.ファン化(アーティストに同一化する)。10.作曲(作詞・編曲・その曲の演奏)(今まで聴いてきた音楽を自分で消化し、新たに組み直す行為。最終的に行き着く先はここか?)。

 さて。このような音楽に対して能動的に関わる10通りの行為は、下図のようなマトリクスに整理できると思う。潜在的な対立軸はおそらく2つある。第1に、素晴らしい曲それ自体を愛するのか?それとも、その曲を生み出したアーティストを愛するのか?という<曲自体←→曲の生み手>という対立軸。これは本当に大きなポイントだ。あるアーティストのファンは、そのアーティストが雑誌でインタビューに応じていれば必ず記事に目を通すし、その人が結婚なんてした暁には大騒ぎする。つまり、ある曲を生み出したアーティストの生き様や思想それ自体に関わろうとする場合、「曲の生み手」志向となる。ロックミュージック/バンド文化は、音楽の聴き手にこのような関わり方を喚起する可能性が高いと個人的に考えている。他方、自分の場合は「曲それ自体」志向が強くて、いくらミスチルが好きでも桜井さんのインタビューを読もうとは思わないし、テレビに出るからと言って録画予約して観たりはしない。あらゆるジャンルの、時代を問わない素敵な音源を、一つでも多く知りたいし、自分の好みが固定化して未知の曲との出会いの機会を逃してしまうのが、とても怖い。クラブミュージック/DJ文化は、このような「曲それ自体」志向を聴き手に喚起する可能性が、おそらく高いはずだ。

 第2に、対象をとにかく肯定して強く愛するのか?それとも、対象を批評的に捉えることによって愛するのか?という<同一化←→批評>という対立軸が存在すると思う。どちらも立派な、能動的な関わり方だ。


 
 ファンは基本的に対象に自分を同一化し、曲の生み手自体を愛する(左上)。コレクターは曲の生み手自体を物象化して愛する(左上)。コピー演奏は、対象に同一化する傾向が強いが、曲それ自体を愛するから行われる場合もあれば、アーティストを愛するがゆえに行われる場合もある(上中央)。最近だとiPodや高級イヤホンに愛着を示す人が増えているオーディオマニアは、全部に対して中立だと思う(中央)。ダンスと作曲(作詞・編曲・演奏)は、曲それ自体を志向するが、対象に同一化しているともいえるし、対象を批評的に捉えなければ作曲(作詞・編曲・演奏)やダンスは不可能だともいえる(右中央)。レビューは対象を批評的に捉えなければ不可能だが、レビューが行われる際、曲それ自体とアーティストについて同時に言及されることが多い(中央下)。選曲・DJ・リミックスは、曲それ自体を志向し、なおかつ対象を批評的に扱うことによって行われる(右下)。
 
 さて。自分は、昔はジャズピアノを懸命に練習していたけれど、現在は、「オーディオマニア」「ダンス」「DJ」「選曲」「レビュー」を通じて音楽を愛そうとしている。「オーディオマニア」について。iTunesでは可逆圧縮のApple Losslessで曲をエンコードし、indigo DJというサウンドカードを通し(これが驚くほど音が良い)、BOSE M3というスピーカーに音を出力しているし、iPodにはSHUREのE4Cというイヤフォンをつないでいる。現状ではこれで満足だし、これ以上投資するつもりはない。「ダンス」は、クラブで心地よく踊る時に。「DJ」「選曲」について。TRAKTOR 3というDJソフト、先述したIndigo DJというオーディオインターフェース、Vestax VCI-100というMIDIコントローラを利用し、HDDに眠る2万曲のApple Lossless音源を活用しながら、mixを作ったり色々とあがいている(またの機会に色々と書きます)。できれば、DJの延長線上で、Ableton Liveというソフトを利用して、トラックメイキング(作曲)もできたらなぁ、なんて思っています。
 
 最後に、音楽の「レビュー」について。これは、いわば、自分の言葉で音楽をふたたび奏でる行為だ。心を掴まれた音楽に、自分しかできない言葉の使い回しで、独自の価値を発見し、新たに付与する、レビューという営み。本当はこれを流暢に行いたいという野望を持っているけれど、なかなか難しいよなぁ。いろんなレビューがあるけれど、多くのレビューは、3つの典型的なやり口に集約されると思う。
 
#a. 楽曲の背景知識を得意げに解説する「背景知識解説型」(この曲はこのアーティストの昔の○○というアルバムに出てきたモチーフを進化させたもので云々…/この歌詞は彼の幼少期の体験を元にして書かれたもので云々…/これはジャズの演奏法に転換をもたらした記念碑的なアルバムで云々…)。
 
#b. 楽曲を聴いて自分がどう感じたかを独断と偏見で記述する「心情・感想吐露型」(思わず泣いてしまいました云々…/ラストのソロ部分が最高でゾクっとしました云々…/個人的にこれは○○の最高傑作だと思う云々…)。 
 
#c. 楽曲と、楽曲をかけるシチュエーションの関係について語る「環境・状況記述型」(お掃除するときに聴いています云々…/昔失恋したときに聴いて勇気をもらいました云々…/首都高を一人で深夜ドライブするときに云々…)。
 
 もちろん、「背景知識説明型」「心情・感想吐露型」「環境・状況記述型」を組み合わせた複合コンボになるのが通例のようだ。これ以外のレビューの仕方ってなかなか無くて、音楽のレビューが、個人的に心苦しかったりする。いろいろと模索しているので、生暖かく見守ってやってください。それでは!
 
(追記)ここまで書いてきて、一番愛すべき音楽との関わり方を書き忘れていたことに気がついてしまいますた。。「Liveに行くこと」!これはもちろん<曲の生み手>志向かつ<同一化>志向(図の左上)だけれども、これが最高だよなぁ。あぁ…生は最高です(笑)
 


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