9月 21

Bar
Ricoh GX100 / Daikanyama / Tokyo

 クラブの政治学。クラブに行くのが大好きだ。可愛い女の子のなまめかしい四肢にときめきを感じるからクラブが好きというよりも(もちろんそれが無いと言ったら嘘になるけど)、自分の音楽の趣味(Jazz, Funk, Soul, Hiphop, House)がクラブ寄りなので、よく通っている。ちなみに、クラブのイベント情報を集めたポータルサイトとしてはclubberiaが出色だけれども、今日は、クラブという場ではたらく力学について考えてみたい。

 クラブに人が引き寄せられる理由として、音楽・酒・踊り・濃縮感・コミュニティ・エロスの6要素があげられると思う。好きな音楽に耳を傾けながら、美味しいお酒にほろっと酔って、浮遊感に酔いしれながらステップを踏めば、数十メートルの小さな範囲にみんなの身体から発散される熱気が立ちこめていて、なじみの知人に偶然出会ったり見知らぬ他人と意気投合したりして、ときには男女の駆け引きがつかの間の甘美な果実を実らせてくれるし、少なくとも誰もが暗黙裡にその期待を滲ませている、といった具合に。

 個人的に面白いなぁと思うのは、クラブという場では、<排除>と<包摂>という背反する力が入れ替わり立ち替わりあらわれてきて、そのどちらもが陶酔や快感をもたらしてくれる点だ。

 <排除>の力について。音楽という点では、センスの良い音源をセレクトできるかどうかでDJの価値が決まってくるし、あるイベントに来ている人間は、「俺はマニアックでセンスの良い音を流すパーティーを選んだんだ」という自負心や優越感をある程度は持っている。ダンスという点でも、誰もが格好良く踊れるようになりたいと思っているし、踊りに自信のある人間は、これみよがしにスキルの違いを見せつけようとする。

 コミュニティという点でも、「イケてる俺達ってすげーよな」的な、閉鎖的で排除的なグループを組んで大声あげて誇示行動を取る連中が一定数いたりするし、どれくらい格好良いか・可愛いか・おしゃれかによって、見知らぬ相手が自分に興味をもってくれる度合いがまったくちがってくるから、皆が「イケてる自分」になろうと頑張っていたりする。女の子は女の子で、一方に露出万歳・エレガントさ重視なギャル系やお姉系のグループがいて、他方に「おしゃれさ」を重視するふわふわとしたシルエットの代官山・表参道系の娘たちがいて、その他にダンス重視な(UAやBird的にアフロヘアーにしちゃうような)ストリート系がいて、お互いにそれなりのライバル心を燃やしている(踊るためにぺたんこのスニーカーを履いてくるか、それとも美しく魅せるためにヒール付きのサンダルを履いてくるか?)。男についても、ギャル男やワイルド系と、(「くるり大好き!黒ぶち眼鏡!」的な)個性派系と、ダンスとクラブが大好きです的なストリート系が、微妙な緊張関係にあったりする。エロスという点でも、興味のない男から声をかけられた場合の女の仕打ちは凄惨だし(笑)、人を値踏みするような視線の交差点と化している。

 でも一方で、クラブは暖かい場所でもあって、その暖かさも快楽をもたらしてくれる。<包摂>の力について。音楽という点では、「ぐだぐだ格好つけなくても、とりあえず踊れる・ノれる・楽しめるならなんでもいーじゃん!」的なコンセンサスはあって、平気でモーニング娘の曲が流れたり、昭和歌謡が流れたりもする。ダンスという点でも、「音を楽しんで自然と体を揺らせばそれでいいんだよ!」的なことはよくいわれているし、「人のダンスを馬鹿にする奴は野暮でイケてないね」的な正義感が流通していたりする。

 コミュニティという点でも、「こんな小さな箱に集まった俺たちはみんな仲間だよね」的な自負心はあるみたいで、気持ち悪くなって床に倒れこんでいたら誰かが面倒を見てくれたりするし、掛け声を出しながらみんなでみんなを盛り上げようとするし、強力な仲間意識や一体感がまちがいなく存在していて、それが快楽をもたらしてくれる。エロスという点でも、男女は不自然になれなれしく友達感覚で、見知らぬ他人と肩がぶつかっただけで笑いながらタメ口で冗談を言い合ったりすることは、ザラにあったりもする。

 このように、クラブでは、<排除>と<包摂>、いいかえれば<センス競争>と<仲間意識>の力学が交互に場面ごとにあらわれてきて、そのどちらもがそれなりの快楽をもたらしてくれる。<センス競争>に敗れて居心地の悪い思いをしたって、<仲間意識>に救われたりすることはよくあるわけで、クラブのふところって意外と広いなと思ったりもする。ただの踊り場じゃないし、ただの出会いの場でもないし、それなりに複雑な場所なのだ。

 もうひとつクラブの特徴をあげるとすれば、その「あけすけさ」かなという気がする。「イケてるのかイケてないのか」というシンプルな原則で他人の価値を容赦なく値踏みする、その「あけすけさ」が、結構好きだ。「人間性」なんて言葉がびた一文出てこないような、選んで捨てて、切って貼ってな、男と女の関係性だったり、DJが音源を選曲するようなやり方が、人間に対しても行われているというか。そうだ、これを「DJ的人間関係」と名付けてみよう。女の、好みでない男に対するあしらいぶりは凄まじいけれども、あそこまで露骨にやられると、なにかすがすがしい気持ちになってしまう。あけすけに自分の表面上の価値を査定され、束の間の交換可能な存在にすぎないものとして扱われる場所は、普通に生きているかぎり、なかなか存在しない。まどろっこしいこの世の中に、あけすけな場所も残されていることは、かならず、誰かにとって、救いになっているはずだと思うのだ。


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